指紋

人差し指を眺めている。
どうして人には、指紋があるんだろう。

個人を特定するため――?
 進化の意志にそんなものは必要ないだろう。
ただの紋様――?
 短絡的だな、俺は……
偶然――?
 まぁ、あり得なくはないな。

……そもそも生物学やら進化学を知らない俺には、わかるはずもねぇか。

たとえそれを知ってたとしても、この指に刻まれた紋の意味が理解できるとは言えないが。

「ピガ――ッ ああー、テステス……コホン…………
お前は完全に包囲されている! 無駄な抵抗はやめ、武器を捨てて降伏しろ!
 ピガ――――ッ!!」

俺は指を眺めている。この小さな部屋という場所で。
指という指に、紋が張り付いていた。

「現在たてこもっている犯人を、警察が説得しているところです。
今回の事件は、激しい口論の様子を周辺の住人に聞かれていたことから発覚し、
現場に指紋の跡が残っていたことや、被害者の男性と親しい友人であるということから、
犯行が衝動的であると専門家は言っております。
人質の女の子を早々に引き渡せば、情状酌量の余地は充分――」

座ったままリモコンでテレビを消す。
さすがはマスコミ、といったところか。大方は当たっている。

ただひとつ、間違っていることがあるとすれば、
俺は許されることはない、ということだ。

罪は罪。罰は罰。
いろいろな間違いをおかしたが、その責任は俺にある。
この紋様は、その証か――

俺には指紋の理由は知れないが、
なぜだろう……生きる意味のことはわかっていた。

部屋の外からは、ざわめきが聞こえている。

ちらとソファーですやすや眠る女の子に目をやる。

すまない。

心のなかで、つぶやく。
そして、初めからこうするべきだったんだ、とも。

俺は銃を口に差し込んだ。
親指に力を込める。

生きる理由――そんなものは、ない。
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