--遠い遠い記憶--
「は〜い、ミルクでちゅよ〜」
私はゆさゆさと体を揺らしながら、哺乳瓶を口につけてあげた。
コクコクと小さなノドが動く。
口角の笑み。
ひくひく動く鼻。
円らな瞳。
丸い頭。
少しクセのある柔い毛。
ぷにぷにの肌。
か細い指。
ゆらゆらとたゆたう脚。
すべてを委ねた重さ。
このすべてが愛惜しくて。
壊したくはない。
いつかくるその終わりが怖くて、ただ仕方のない空しさに襲われる。
始まってしまったことを、悔いるほどに。
あなたは。
あなただけは。
どうぞ、幸せに。
たかい、たかい。
たかい、たかい。
そのすんだ青空へ。
あなたの高明な笑みを、色づいた幸せに。
たかい、たかい。
たかい、たかい。
たかい、たかい。
僕は、目を覚ました。
涙は、頬に添えていた手の甲を濡らしていた。
微かな、母親という記憶。
これは、僕が幼いころの母さんの思い出だろうか。
それとも僕が、いつかどこかで母親だったころの慈しみなのだろうか。
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